砕かれた神

岩波現代文庫です。元は朝日新書に入っていたのが絶版になり、岩波現代文庫に移りました。 この本は出征した少年兵が帰郷し、苦しい戦後を生きて行く中で天皇制に疑問を抱き、主体的に考え行動することは何かを学んで行き、人生を選択して行くという内容です…

イギリス貴族―ダンディたちの美学と生活

イギリス貴族ってなんだかいい響きです。 草原に横たわる広大な領地、古風にして上品な城塞、狐狩り、華麗なロンドン社交界・・・。 「人民からの搾取による不当な浪費だ!!」 と、柳眉を逆立ててみてもよいでしょう。本当ですから(笑)。 でも、魅力はあ…

室町時代の一皇族の生涯 『看聞日記』の世界

この本は書店で眺めて「ほしいな」と思いつつ、金欠や積ん読の多さにめげて手を出さずにおいてそのまま題名も忘れてしまっていました。気にかけていたのですがなかなか見つかりませんでした。 でもある時、ふと、大型書店でみかけて思いだし、「これだ」とば…

イエメン もうひとつのアラビア

私の愛読書です。たぶん古本屋で手に入れたと思うのですが、もう忘れました。 確か、ブックオフか何かで「あれ、よさそうだぞ?」と立ち止まってぱらぱらめくり、「これは・・・!」と思って家で読んではまったと言うパターンだった気がします。 確認してみると…

怪帝ナポレオン3世

ナポレオン3世、第2帝政の主。運と血筋だけで上り詰めて、盛り上がるドイツ帝国の興隆の前にあえなく失陥した男。 ナポレオン1世とは対極的な評価をされがちなこの人物を「じつは社会的分配の公正のための戦いに一生をささげた大政治家だった」と「読み替…

ローマ帝国愚帝列伝

講談社選書メチエです。このシリーズは入門書っぽい雰囲気でありながら、なかなかうならせる作品もあり、侮れません。 著者は文部省教科書調査官と言う固い仕事のかた。 内容は著者(あとがき)によれば「読者を最後まで飽きさせない面白い本を」と編集者か…

少年裁判官ノオト

地元の図書館に買って貰って読んだ。この本は無理すれば自分でも買えそうだったし、手元にも置きたい感じがしたのだが、あえて図書館に頼んだ。人にも読んで欲しい感じがしたのだ。 この本の著者、井垣康弘氏は、神戸家裁を約1年前に退官した裁判官である。…

ラブロマ

このコミックはなかなかにノスタルジックで癒されます。 そして、コミュニケーションの対立の統一と闘争が非常に巧く描写されており、うならされます。ギャグは通俗的(記号文法的とも言える)で絵柄もソフトなのですが、よりよきコミュニケーションを求め合…

民法案内

昔から愛されてきた、我妻榮先生の民法案内。その後も名だたる大家が大先生を継いで補訂を続けています。 御本人は学生が大学の先生の講義を聴く前に予習として用いるとよい、とおっしゃっています。正確な地図は概して分りにくく、却って観光地の案内図のよ…

石原莞爾

石原莞爾中将をみなさんはご存じですか。(彼の姓は「いしわら」と読むらしい) 私は、彼の書いた「最終戦争論」を読んで以来、きわめて興味深い存在だと考えていました。ドイツのナチス党のヒトラーを筆頭とする怪しい連中やイタリアのムッソリーニ元帥など…

幕末の宮廷

幕末に実際、朝廷で官人をしていた下橋敬長氏の口述をまとめた本。 絶版です。古本屋にもさっぱりありません。あきらめて図書館で借りました。 面白い本です。ある意味で生き証人の口述ですので、生資料に準じるとも言えるでしょう。学者もこの本を引用して…

随想:おごらぬものも久しからず

本を読んでいて「オヤジが某に『おごれるものも久しからず』と平家物語を教えたら息子が『おごらぬものも久しからず』と答えてぶん殴られた」なる記述があって大受けしたら、大受けした拍子に書名を忘れてしまった。 あんまり感銘(?)を受けると却って忘れ…

籤引き将軍足利義教

今谷明氏の本です。 氏の本といえば、「室町の王権」を大学時代読み、かなりの衝撃をうけました。 何しろ、足利義満が「簒奪」を企てていた、と言う衝撃的な内容だったからです。氏の主張の根幹である、歴史はまずは政治史、と言う部分には割り切れなさを感…

売春論 

風嬢に印税はやりたくない。そう思いつつ古本で手に取る。 酒井あゆみ、売春論、河出書房新社。 彼女の本は、「もともとそうだったひと」を「そうだった本人」が取材してかいてゆくというスタイル。 同工異曲のインタヴュー集がある。 注目点:酒井は文章が…

随想:退院とともに

かごから解き放たれた小鳥のごとく、遠く青空を飛んでみました。 しかし、空はただ青くて無限です。 小さなこの身にとっては。 …小人は閑居においては、やはり愚行しかしません。

随想:病室と監獄は学習室?

入院しました。とほほ。 そして、本が馬鹿のように読めます。 カイエ・ソバージュが全部読めてしまいました。法律書もグイグイいけます。 病室と監獄は学習室とは昔から言いますが実感します。 このままずっと居たい。 ただし食事がお粥でなければ(笑)。

権利のための闘争

岩波文庫です。はじめて読んだのはいつだっただろうか。大学生のはじめの頃だった気がする。法学部の友人、所謂後輩だが、大学に長々と居たし、付き合いが長くなると自分の何が先輩かなんかなんて訳が分らなくなるもので、彼から教えて貰った気がする。 「権…

新訳 星の王子さま

心を動かす度合いが強すぎると、却って感想が書けないことがあります。 その対象を客観視できないほど心を揺り動かされたと言うことでしょう。 幸いにして、思想書、宗教書やビジネス書でそういう思いをしたことはありません。法律書でももちろん。「いい本…

精神科医になる

中公新書である。 この本は色々な意味で、ある種の読者に対してのみ、やや「やばい」ところがある。 この本に出てくる「精神科医」は読者から見たとき「等身大」になる。 副題は「患者を<わかる>ということ」とかいてあるが、そのダイナミズムが逆転すれば…

随想:読書していられる日常

30過ぎてぷー同然(そのもの)の生活をしていて思うのは、「本を読むという時間は実は貴重である」と言う事実に他ならない。 分厚い文学書や哲学書に手が伸びなくなるのは当たり前の話で、就職してからの読書というのは、基本的に「娯楽」か「実用」なのであ…

日本語に主語はいらない

語学は苦手です。全く苦手意識から抜けられません。数学よりさらに苦手意識が強いです。数学は、苦手ながらも突き抜ければ、その問題だけは理解できるのですが、語学は(要するに英語)幾らやっても、いつまでも難しいです。 「勉強法が間違っている」「テー…

オブローモフ主義とは何か

とっくに絶版の岩波文庫なのですが、2002年度に一括重版したようで(岩波はごくわずかに需要のある「名作」っぽい作品を本格的に絶版する前に一括重版して備えておくことをするようです)大学時代にすでに絶版していてぼろぼろのカバーもない文庫を先輩…

キリスト教は邪教です!

講談社+α新書ってやつである。正直、はじめて読みます。友達が「これ面白いよ」、とプレゼントしてくれました。 著者は「F・W・ニーチェ」 に、ニーチェー?! 訳者は「適菜収」。失礼だが、 だれだそれ? 、が初めての感想。この人物がいかなる人かは正…

随想:本の馬鹿買い

決戦の日曜日も過ぎ、だらけた綾金庫裏耶は、ついに緊張の糸が切れ思うがままに本を買い始めたのだった。 "人類最古の哲学―カイエ・ソバージュ〈1〉" 中沢 新一; 単行本; ¥ 1,575 "熊から王へ―カイエ・ソバージュ〈2〉" 中沢 新一; 単行本; ¥ 1,680 "愛と…

セックスの邪魔をするやっかいな記憶たち

おひさしぶりの書き込みです。 非常に動揺する日々に、読みたい本、薦められて面白そうな本、何となく買ってきた本、いや、せっぱ詰まって読まなければならない(単に読むだけでなくTT)とか様々な本たちが机、枕元、本棚、パソコンのそばなどにいるわけで…

雑感:本は読むのだが・・・。

結構、実生活が仕事も含めて様々な理由でてんぱっていて、本をストレス解消に読んでも、それが感想に結びつく状況じゃない感じです。 そこで軽くマンガ紹介です。 ヒストリエ:寄生獣のあの人です。古典を踏まえた重厚なシナリオです。命に対する、冷めてい…

雑感:最近本が読めない

いや、読み始めてるんです。 でも、読破せずに積ん読や途中読みが増えてるんです。 せっかくお金を払って本を買うわけだから、それと見定めた本は読んでしまった方がいいとは分っているのだが、「これおもしろそう」と思うと浮気。本だからいいものの、これ…

法律における理窟と人情

民法学者、我妻榮大先生の講演録です。 でも、なぜこの1955年に第1刷の本を、古本で買わなかったのか? 答えは衝動買いしたからです。給料前なのに困ったものだ。 内容は2本の講演録で、一つは表題通りの日本学術会議の公開講演です。もう一つは税務講…

神聖ローマ帝国

この本は、神聖ローマ帝国という何とも言えないよく分らない国を概説してくれる本だと思って買いました。だって題名が神聖ローマ帝国だし。 さて、読み始めてみると、確かに西ローマ帝国の帝位がカール大帝に戴冠されるところから話が始まるのですが、著者の…

安心のファシズム(斉藤 貴男 著)岩波新書(新赤版)

この新書について色々書こうと思っていたのですが、どうも思念が空回りしましたので抛擲します。 ひらがなの「さいとう・たかを」氏と本書の著者の名前が一致するのは、危険な陰謀の発生プロセスの緊迫ぶりがにています。 「ひらがな」の方は比類なき腕前で…