法律における理窟と人情

 民法学者、我妻榮大先生の講演録です。

 でも、なぜこの1955年に第1刷の本を、古本で買わなかったのか?
 答えは衝動買いしたからです。給料前なのに困ったものだ。

 内容は2本の講演録で、一つは表題通りの日本学術会議の公開講演です。もう一つは税務講習生(今の税務大学校かなにかでしょう)向けの講演で「家庭生活の民主化」という題です。

 理窟(理屈)と人情とは、つまり法律の「一般的確実性」と「具体的妥当性」の対立の問題です。
 家庭生活の民主化は、新民法が施行されることによって、どのように日本の家庭が変わってゆくことが望ましいかという家族法の問題を扱っています。

 読後感としては、非常に愉快であった、と言えましょう。法律にすこし知識があれば、なお楽しめますが、そうでない人も十分面白い気がします。この大先生は、非常に世俗に通じているというか、失礼な言葉ですが所謂「学者馬鹿」でない感じがよく伝わってきます。

 万引女を若い検事が諭す話(結構裏のある話です)、民主主義を外ではぶちながら家では封建亭主の政治家、警察官を威張らせているのは誰か?などなかなかおもしろおかしい中に、法律というものがいかにうまく世の中を規律してゆくことがままならないかについて記されています。

 1600円でしたが、この本。一読してそれだけの価値はありました。活版の古くさい活字が似合いながら、内容は古びていない、ふしぎな本です。

 でも古本で買えばもう少しお得だったなあ(笑声)。

法律における理窟と人情

法律における理窟と人情