イギリス貴族―ダンディたちの美学と生活

 イギリス貴族ってなんだかいい響きです。
 草原に横たわる広大な領地、古風にして上品な城塞、狐狩り、華麗なロンドン社交界・・・。
 
 「人民からの搾取による不当な浪費だ!!」

 と、柳眉を逆立ててみてもよいでしょう。本当ですから(笑)。


 でも、魅力はあります。
 その魅力の本質の一端を「ダンディ」という切り口で鮮やかに著者が示す意欲作です。
 この本の本質は、服飾史を中心とする「生活史」でもありますが、魅力的な人物像を通じた「社交界の権力動作の解明」も内容に含まれています。

 写真や図版は豊富です。見てゆくだけで微笑したり、目を見張ったりする優れたものがちりばめられています。

 日本貴族(公卿)との違いを「文官起源か武人起源か」としているところには少しステレオタイプを感じましたが(上位武士は王氏や公卿であったり、同質化もしている。)イギリス貴族の武人性の変形と洗練がダンディである、という説明は明快かつ納得の行く豊富な論理と証拠で固められています。

 ステッキを手にもった「背広」をきてコートを着た英国紳士。
 世界の男のフォーマルを未だに「支配」しています。
 
 例え英国貴族は没落し世襲上院議員の地位を奪われ、財産も失い庶民になりはてても、黄金時代の栄光は世界の男のあり方「ダンディー」を「永遠」に規定するのです。


イギリス貴族―ダンディたちの美学と生活

イギリス貴族―ダンディたちの美学と生活

バイロンオスカー・ワイルドってやっぱり男から見てもかっこいいと思いませんか?
むしろ「男」から見ないとちょっと変な人かも(笑)。