キリスト教は邪教です!

 講談社+α新書ってやつである。正直、はじめて読みます。友達が「これ面白いよ」、とプレゼントしてくれました。
 著者は「F・W・ニーチェ
 に、ニーチェー?!
 訳者は「適菜収」。失礼だが、
 だれだそれ?
、が初めての感想。この人物がいかなる人かは正直説明し辛いので、下に作者HPのurlを書いておきますのでご参照ください(一体何者なのだ?)。
 極めつけは、表紙絵。下に出てますので、見て下さい。この不謹慎さ。刺激度。やり過ぎとしか言いようがありません。

 内容ですが…、ニーチェの後期作品「アンチクリスト」の「現代語訳」をうたっています。
 正直、内容はかなり強烈です。いや、確かに半分読みの「この人を見よ」も「ツァラトゥストゥラはかく語りき」も「善悪の彼岸」も 読 み づ ら い だけでこんなような本ではなかっただろうか?
 
 キリスト教が「僧侶支配」を「同情」を通じて行い、弱々しく劣ったものを盛んにして、高貴にして強い者を挫く、そして科学すら否定する。キリスト教、怪しからん!それを煽った哲学者どもも怪しからん!!キリスト教こそ諸悪の根元だ!!
 
 とまあ、ざっとそんな内容です。(乱暴すぎの要約である)
 でも、この本は「読めば分りやすく」、「ぱっと見は誤解される」わざとそういう風につくってある感じもします。

 真面目な話、「宗教(特に一神教)」全体に挑戦したこのニーチェの著作は、もう息も絶え絶えな面もあるのですが、誰もが為し得なかったタブーをぶち破った感もあります。
 ヨーロッパでキリスト教批判を真正面からするのは、ほとんど戦前の皇居前(そのころは「宮城」と言いましたな、確か)で「天皇国賊だ!」と街宣車で叫び回るくらいの勢いです。ソ連で「レーニンこそアヘンです」というビラをクレムリン宮殿の屋根から撒き、ホワイトハウスの前で「資本論」を全巻寝ずに朗読するくらいの勢いがあるとも言えるでしょう。
 でも、どうすればニーチェの言う「キリスト教的なるもの」から脱出できるかは、本著では示されてはいないのです。そして低劣で劣悪なはずの「キリスト教的なるもの」が何故「高貴で力強い」ものを押しのけて「天下を取ったか」かも分りにくいのです。訳語が分りやすい分、ニーチェの「無邪気さ」も分りやすく、何故ニーチェキリスト教に抗議するのかは理解できても、ニーチェがでは何がしたいのかは逆説的に益々分りにくいと言えましょう。

 でも、アンチクリストをあえて宣言しただけで、大いに意義は深いのかも知れません。現に「キリストの名の下に」「邪悪」な者を討とうとする者はこの世に大きな力を占めています。美名の影にある者を指さすだけで、意味は大きいのですから。
 
 一番受けた訳語は「物自体って何ですか」です。
 大学時代にこの奇っ怪な言葉に苦しめられた懐かしさを思い出しつつ、やっぱり本は分りやすい方がいいや、としみじみ思った読書体験でした。 

キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)

キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)

「硬い」訳で読みたい方は…
ニーチェ全集〈14〉偶像の黄昏 反キリスト者 (ちくま学芸文庫)

ニーチェ全集〈14〉偶像の黄昏 反キリスト者 (ちくま学芸文庫)

適菜収オフィシャルサイト「はさみとぎ」
http://www.geocities.jp/tekina777/