安心のファシズム(斉藤 貴男 著)岩波新書(新赤版)

  
 この新書について色々書こうと思っていたのですが、どうも思念が空回りしましたので抛擲します。
 
 ひらがなの「さいとう・たかを」氏と本書の著者の名前が一致するのは、危険な陰謀の発生プロセスの緊迫ぶりがにています。
 「ひらがな」の方は比類なき腕前で銃弾一発で解除なのですが。

 「漢字」は「もう逃れるすべはない」「・・・も自分から当然にそうするようになる」という感じで、監視社会の不気味を、結論をどう防ぐかではなくそして結論を見せびらかすでもなく、事態そのものを軽蔑する筆致でお奨めになる。
 
 この本はどうも、事態を解決することを目的としていない、と言うか、警世に篤く、策に薄い恨みのある本です。  

 ただ面白いのは有名どころの刑法学者前田雅英人間性が暴かれていたりします。最高裁の元判事とかの退嬰的なせりふとかも結構きます。

 監視されてもいいや、と開き直る人には確かに心に響かない本です。

安心のファシズム―支配されたがる人びと (岩波新書)

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空疎な小皇帝―「石原慎太郎」という問題

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