説教 小栗判官 (近藤ようこ 著) ちくま文庫

 ちくま文庫も、また品揃えがよい。値段が高めなのもまあ許せてしまう。(財布がそれを客観的に許すかどうかはまた別だ。)
 マンガ文庫も充実しており、水木しげる杉浦日向子などがスバラシイ作品を提供している。エコノミーな水木フリークはまず、ちくま文庫であろう。

 さて、「説教 小栗判官」である。
 説教節というジャンルについては、私は暗い。文末解説によると、相伝で説教師なる芸人が受け継いできた話芸のようだ。
 作者近藤ようこは説教の中でも長編でドラマティックな「小栗判官」をマンガにしようと考え、実現する。

 本作の最大の見所は、「表紙絵」だ。それに気がつくのは、もちろん読み終わった後だ。表紙をなくしたりしても大丈夫。中に同じ構図の絵があるから。

 あらすじは止めておこう。読めば分ることだから。
 女主人公、照手の姫は夫の常陸小栗のために餓鬼阿弥陀仏を引いて供養を為したいとして、車を引く。そして、自分一人で引いてもいくらにもならないことに気がつき、もの狂いを装い、人を集めて、口上を述べ、ひけよひけよと餓鬼阿弥陀仏を引き始める。
 
 決意、愛する夫のために、あえてもの狂いまでを装う。

 説教という文芸表現に微かに興味を持ちました。私は。
 でも、それ以上に、りんとたつ姿にして、もの狂いの彼女の愛は誰に届くんだろうと、心熱くなった物語でもありました。

説経小栗判官 (ちくま文庫)

説経小栗判官 (ちくま文庫)

原典は・・・

説経節―山椒太夫・小栗判官他 (東洋文庫 (243))

説経節―山椒太夫・小栗判官他 (東洋文庫 (243))